The Core Protocols V3.01 日本語版

以前、平鍋さんの記事で紹介されていたJim McCarthy氏のThe Core Protocols V.3.01。本家でも翻訳版を募集していたので、翻訳を行いました。

The Core Protocols V.3.03(原文)
http://www.mccarthyshow.com/wp-content/uploads/2011/02/The+Core+Protocols+3.03.pdf

The Core Protocols (Foreign Translations, 日本語訳あり)
http://www.mccarthyshow.com/download-the-core/

チームづくり=製品づくり

だとJim McCarthy氏言い切る。

この言葉は平鍋さんの言う「ソフトは人が人のために作るものだ」という言葉にも通ずると思うが、Jimの言葉はもうすこし言わんとするところが絞られている。「チーム」こそが大切だと言っているのだ。もう一度言おう。「人」ではない、「チーム」なのだ。


最近、「マインド」という言葉をよく耳にしたり、目にしたりする。特にアジャイルな分野ではこのキーワードが踊る。良いマインドを持っている人達が集まれば、きっと効率よく、開発者たちも気分よく開発を行えるだろう。なのでそのマインドに関する知識をみなで共有する方向に向かうのとはとても理にかなっているし、筆者もアジャイルな分野は大好きだ。


「マインド」を知ることは簡単だ。
しかし、そのマインドを豊に、そしていつでも実践できるように育てるのは非常に難しい。
これはみなが認めることだと、筆者は思う。

「人の質」。

これを簡単に向上させることがどれだけ良いだろう。とりわけコミュニケーション能力についてはこれを教えるだけで十分ビジネスになっている分野だ。


この人の質を向上させることへの難しさや、ばらつきへの対策として有名なのは「開発プロセス」や「プロジェクトマネジメント」といった分野ではないだろうか。開発者たち(プロジェクト)の行っていることを、監視し、把握し、分析し、統制する。しかし、人間は抑えつけられたり、上から渡されるだけのものには、反発する。

開発は人が行う。だから、いかに開発者たちに意欲的に、快適に開発を行ってもらうか。これが大切だ。
これができたら、次は、各個人たちが連携し、シナジーを高めるような「チーム」を作ることができるとなおよいだろう。

Jim McCarthyyの著作である「ソフトウェア開発のダイナミズム」(原著Dynamics of Software Development)に興味深い一節がある。

人と人との間で真実を伝えるための媒介となるもの、それは感情である。

とても納得できる一文だ。
人と人とのコミュニケーションには必ず感情が関与する。
そのお互いの感情によって、伝えたいことが伝わらなかったり、伝わるべき内容が伝わらなかったりする。

他人の感情そのものを外からコントロールすることはできない。しかし、開発者たちの感情の起伏をガイドしたり、悪い方向に感情が爆発しないようになんとかすることならできそうだ。

これこそが今回翻訳させていただいたThe Core Protocolの本質だと筆者は考える。

このプロトコル

  • チームで活動するときに持っておくべき心構え
  • チームで活動する際に生ずる様々なコミュニケーションにおいて使える対話の方法(プロトコル

を定めている。

常にチーム全員が一定の方法に従ってコミュニケーションを行う事で、不必要な感情のやりとりを抑えられるのだ。
このプロトコルに則ってコミュニケーションを行う限り、開発者たちに不必要な感情が起こったとしても、その悪影響を小さく抑えることが可能になるだろう。

不必要な感情による悪影響が小さいということは、各開発者は常によりよい製品をつくるという目的から外れることも少なくなり、結果的に良いチームワークを生むことができるという具合だ。

筆者はこのプロトコルをまだ実践したことはないが、是非実践しているチームの効果を実体験してみたいと思う。
他の皆さんも、一度このThe Core Protocolsに目を通してみてほしいと思う。

ソフトウェア開発のダイナミズム」(原著Dynamics of Software Development)からとても魅力的な言葉を挙げておく。

  • 一見整然と組織されたうわべを剥いで見れば、深く多様な精神文化的混沌が姿を現す。そこには創造性、集団力学、むき出しの本能、技術的スタイルが無秩序に蠢(うご)めいている。画期的なものはこのカオスから生まれる。
  • ソフトウェア開発責任者の真の任務は、できる限り多くの知性を集約して製品の製作に役立つ活動に投資することだ。
  • 素晴らしいソフトウェアを作ることも、知的に結びついたチームなら手の届く範囲にある。と言うより、そうしたチームの手の届く範囲にしかないのだ。
  • 素晴らしいソフトウェアを期限どうりに出荷しようとするなら、全員をこのゲーム(ソフトウェア開発)に没頭させねばならない。
  • この本の言っている一番重要なことはわずか3点に集約できる。人々に考えさせること、そこで何を考えさせる必要があるのか、そしてその考えを現実にどう反映させるのか。これだけだ。

最後に、今回の翻訳でレビューをしてくださった佐藤 匡剛氏と、平鍋健児氏に心より感謝を申し上げます。